自動車・産業機械の巨大なサプライチェーンにおいて、機械が安定して長期稼働できるかを本当に左右するのは、往々にして完成車メーカーのブランドではなく、駆動系の奥に隠れた精密金属部品です。

今回は、日本で数十年にわたり事業を展開してきた精密金属部品メーカーをご紹介します。同社は「冷間鍛造」をコア技術とし、精密成形を他社が容易に追随できない参入障壁にまで高め、事業を日本国内から中国・東南アジアへ拡大してきました。現在、株主は保有株式の譲渡を検討しています。

本件のポイント(3項目)

  • 一、企業概要
  • 二、投資の魅力
  • 三、取引機会と価格の考え方

一、企業概要

本社を日本国内に置き、創業以来数十年にわたり同一分野に注力してきました。同社は、冷間鍛造を中核技術として、搬送機械・産業機械向け精密金属部品の研究開発、製造および販売を行っています。

同社は、日本の冷間鍛造分野で「小規模・高精密」を特徴とする代表的な企業です。規模拡大よりも技術の深化を選び、冷間鍛造を中核に、機械加工、熱処理、精密仕上げまでを自社一貫で行っています。この一貫生産体制が、寸法精度・耐久性・納期安定性の面で、他社が容易に模倣できない参入障壁を形成しています。

顧客構成では、大手完成車メーカーグループからの受注が連結売上高の75%以上を占めています。自動車部品業界では、大手完成車グループのサプライチェーンに参入するには一般に長期間の認証が必要です。これは同社の数十年にわたる事業実績の証であると同時に、後発企業にとって大きな参入障壁となっています。

現在、株式は創業家一族が保有しており、事業は中国・東南アジアにも展開しています。

二、投資の魅力

① 複数の特許に支えられた成形技術の蓄積
主要製品は、冷間鍛造を中核工程とする精密金属部品です。高精度冷間鍛造成形や中空構造部品に関する複数の特許を保有しています。特定分野で差別化された競争力と、従来工法を代替する能力を備えており、これは単なる効率改善にとどまらず、従来の加工プロセスを置き換えるものです。

② 一貫生産体制と高い財務健全性
材料から完成品までを自社一貫で手がけることで、品質を確保しつつコストも抑制しています。同時に、財務状態は健全で、有利子負債はなく、年間売上高は100億円以上に達しています。さらに相当額の投資有価証券および預金を保有しており、資産内容に厚みがあり、今後の生産能力拡張や技術投資に十分な余力を残しています。

③ 複数拠点の連携体制
日本国内拠点は技術開発と高付加価値製品を担い、中国・東南アジア拠点はコスト競争力と市場への近接性を両立させています。買い手は、自社のニーズに応じて生産能力と市場リソースを配分できます。

三、取引機会と価格決定の考え方

現在、株主は保有株式の譲渡による現金化を検討しています。

譲渡価格については、企業価値おおむね80億円を基準とすることを希望しています。この価格は、純資産価額法およびDCF法による90〜100億円の評価額を基礎に、非上場かつ株式譲渡に制限があることによる流動性ディスカウントを考慮して算出したものです。

80億円の根拠は、すでに軌道に乗った事業にあります。数十年かけて蓄積された技術資産、大手完成車グループを含む顧客基盤、冷間鍛造を中核とする複数の特許、有利子負債のない堅固な財務体質、そして日本国内を基盤に海外へ広がる明確な成長パスです。

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