【M&A対象企業の紹介1】「針と糸」が資産になったら:長江デルタの日系縫製工場、事業承継を検討
2026年10月9日 公開 ・ Denchi Advisory
ファストファッションとECが市場を席巻する時代にあって、真に希少なのは、機械ではなく、一針一針を丁寧に縫える熟練した縫製ワーカーたちと、20年間静かに稼働し続けてきた工場です。
今回、ある工場譲渡案件をご紹介します。長江デルタの中核地域に位置し、経験豊富な縫製チームと稼働中の生産拠点を有する日系工場が、事業承継または工場譲渡という形で後継者を探しています。
本件のポイント(5項目)
- 一、譲渡案件の概要
- 二、譲渡の背景
- 三、中核資産
- 四、投資の魅力
- 五、取引機会と価格決定の考え方
一、譲渡案件の概要
ある日系企業グループは、長江デルタ地域に位置する縫製工場について、事業承継または工場譲渡を検討しています。
同グループは中国で20年以上にわたり事業を展開し、これまで高品質な縫製製品を生産してきました。主要取引先は、品質基準の厳しいブランドです。
特筆すべき点は、中国市場から直ちに撤退するわけではないことです。グループ全体の生産拠点再編計画に基づき、今後3年以内に中国事業を段階的に縮小する予定です。そのため、工場と縫製チームは、縫製を理解し、継続的に事業を運営できる同業者または投資家に引き継いでほしいと考えています。
二、譲渡の背景
従来、サプライチェーンとリスク分散の観点から、中国法人が一時的に赤字でもグループ全体が黒字であれば中国拠点を維持する方針を採っていました。しかし近年、経営環境が徐々に変化しています。
- 中国の人件費が持続的に上昇しています。
- 円安により、越境取引に伴うコスト負担が増大しました。
- 日本人管理者の撤退以降、現場管理の難易度が高まりました。
- グループ全体の生産拠点をより最適化・統合する必要があります。
今後、グループは生産資源を日本国内および海外の生産拠点に一層集中する予定です。一方で、中国工場には依然として多くの熟練従業員がいるため、単純な閉鎖はできるだけ避け、工場・事業・従業員を含む承継の可能性を優先的に検討したいと考えています。
三、中核資産
① 熟練した縫製チーム
これは本件の中核的価値です。工場には、長年にわたり縫製生産に従事してきた約100人の従業員がおり、直接生産と間接管理の両方を担う人材も含まれています。熟練した縫製ワーカーの人手不足が続く中、一から育成する必要がないチームは、金額では測れない資産と言っても過言ではありません。
② 土地使用権
土地と工場建屋は権利関係が明確です。長江デルタの中核地域に位置し、上海や蘇州へのアクセスが良く、産業インフラと物流環境も整っています。
③ 既存の工場建屋
工場の総面積は約12,000平方メートルです。現在も稼働中であり、建物の状態も良好で、そのまま生産に使用できます。
④ 縫製生産設備と完備した生産体制
工場には縫製関連の生産設備が一式導入され、完備した生産管理・品質管理体制が構築されています。既存設備と生産経験を踏まえて、衣料品、インナーウェア、機能性衣料、他の縫製製品への展開も可能です。
四、投資の魅力
(1)用地取得は難しく、工場建設にも時間がかかる——既存の生産拠点が最も時間効率が良い
中国では工業用地の供給が逼迫しており、環境アセスメントと工場建設には時間がかかります。権利とチームを伴い、即時稼働が可能な既存工場を取得できれば、ゼロから工場を建てる場合と比べて、少なくとも1〜2年の時間コストを節約できます。
(2)熟練したワーカーこそ最も代替しがたい参入障壁
縫製業界への参入では、本当の障壁は「人」です。熟練した従業員チームは、生産能力・品質・納期対応を即座に確保できることを意味し、特に受注が確定していて生産能力の増強を急ぐ企業に適しています。
(3)転換の余地が十分
インナーウェア、衣料品、機能性衣料、スポーツウェア、さらには医療・介護向け繊維製品への展開も十分に可能です。
(4)グループ基盤が安定、無借金
日本グループ全体の経営基盤は安定しており、有利子負債もありません。財務危機による売却ではなく、戦略的な再編のための売却であり、取引相手としてクリーンかつリスクが低いです。
(5)取引スキームが柔軟
売り手は具体的な取引スキームを限定しておらず、中国現地法人の株式譲渡も、土地・建物・設備の資産譲渡も可能で、ニーズに応じて柔軟に協議できます。
五、取引機会と価格決定の考え方
本件は、工場の資産価値および継続価値を取引価格の算定基礎とすることが想定されています。なお、価値の高い縫製設備の一部について、売り手が別途処分または日本へ移設する可能性があるため、最終的な譲渡対象の設備リストは双方の協議により確定する必要があります。
売り手が買い手に求めるのは、価格だけではありません。
- 既存従業員が適切に処遇されること
- 既存の縫製技術と生産経験が継承・活用されること
したがって、単なる土地の取得を目的とする投資家と比べて、売り手は原則として実際の生産ニーズを持つ買い手をより優先したいと考えています。
明確な投資意向がございましたら、秘密保持契約を締結し、売り手の同意を得たうえで、当方よりご希望の方に対し、会社情報、財務資料、不動産権利関係資料、設備リスト、その他の詳細情報を提供可能です。
上記の件にご関心をお持ちの企業または個人の方は、お気軽にご連絡ください。
DENCHI(「デンチ」)は財務・会計・税務・税関を専門とするコンサルティング会社です。
◆ コアメンバーは四大会計士事務所、大手日系企業或いは税務機関出身のOB/OGの集まりであり、皆グローバルなビジョンを持ちながら、ローカルの実践経験を有している人たちです。現在、深圳及び広州2拠点に合計90名以上の専門家が在籍しています。
◆ 2013年設立以来、数多くの日系企業に税務調査対応、移転価格、会社再編などのサービスを提供しており、税務関連の経験が非常に豊富です。その他、日常顧問、法定監査及び税務監査などの業務も携わっており、日系企業の経営及び内部管理に力を貢献しています。
◆ 業界最高のレベルを代表できるサービスを提供しているにも拘らず、リーズナブルなサービス料金を設定しております。
◆ デンチの特徴は、実行性の高いアドバイスを提供することであり、お客様からアドバイスの執行可能性が高い、問題を確実に解決できると評価されています。
工場譲渡・事業承継など、企業再編に関するプロフェッショナルなサポートをお求めになるなら、ぜひ私どもとお気軽にご連絡ください。
本記事は DENCHI 公式 WeChat アカウント「Denchi advisory」の 2026年10月9日 配信記事をもとに編集・転載したものです。詳細は微信(WeChat)公式アカウントにてご確認いただけます。
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